アロンアルフアを若返らせる縦型クリエイティブ。BOVA受賞チームが明かす、AIアイドルと「推し活」を掛け合わせた共感の生み方
宣伝会議が発行する月刊『ブレーン』主催のオンライン動画コンテスト「Brain Online Video Award(BOVA)」。第13回を迎えたこのコンテストで、CARTA ZEROとピラミッドフィルムが共同企画・制作した動画が、「協賛企業賞」を受賞しました。
協賛企業からの課題に対し、1分以内の動画を制作する「縦型動画部門」で挑んだテーマは、「10代、20代が“アロンアルフアを使ってみたい!”と思う動画」。
「壊れたら使う」という接着剤のイメージを、どう「使ってみたい!」に変換するか。制作に携わったメンバーに、企画の着想から縦型動画ならではの演出、そして「感情を動かす」クリエイティブづくりについて聞きました。
(聞き手 フリーアナウンサー 藤井みりか)
■受賞作品
東亞合成/10代、20代が「アロンアルフアを使ってみたい!」と思う動画
協賛企業賞/「推しへの想い 接着中」
鳥居薫・永島隆行(CARTA ZERO)、那須川剛(ピラミッドフィルム)

制作者コメント
“つながり”を大切にする若者に向けて、推し活グッズづくりに励む3人組の姿を描きました。便利なだけでなく、愛ある推し活グッズの数々と共に、推しや推し友との時間を繋ぐ、楽しくクリエイティブな商品であることを表現。広告色を抑えた一人称視点での撮影手法やフィルム写真のコラージュを用い、エモーショナルな世界観で表現しました。
鳥居 薫
CARTA ZERO IMC局 クリエイティブプランニング部 クリエイティブディレクター / コピーライター
クリエイティブエージェンシー、スタートアップを経て、CARTA ZEROに入社。ナショナルクライアントのブランディングをはじめ、各種ムービーやグラフィックまで、マスとデジタルを一気通貫するクリエイティブの企画制作を行い、顧客の事業進化をサポート。
永島 隆行
CARTA ZERO IMC局 クリエイティブプランニング部 クリエイティブディレクター / アートディレクター / OOHメディアプランナー
不動産広告を主軸におく広告代理店と、羽田空港やJRの広告を取り扱う広告代理店で計20年間勤務。デザイン部署の立ち上げやプランニング業務に従事。2022年、CARTA ZEROの前身Zucksに入社し、2023年、CARTA ZERO IMC局へ。クリエイティブディレクション、コミュニケーションプランニングを担当している。
金澤 佳子
CARTA ZERO IMC局 ストラテジックプランニング部 ストラテジックプランナー / リサーチプランナー
美容商社、博報堂グループのリサーチ会社を経て、2025年、CARTA ZEROに入社。
リサーチ会社でのキャリアで培った分析力で、生活者の潜在的な欲求や行動心理を紐解き、幅広い業界やテーマの戦略やプランニングに積極的に活用している。
那須川 剛
ピラミッドフィルム ディレクター / プランナー
長岡造形大学視覚デザイン学科を卒業後、ピラミッドフィルムに入社。映像・広告領域を中心に、企画から演出まで一貫して手がけ、幅広いクリエイティブ制作を行う。実写映像に加え、近年はAI技術を活用した映像表現やビジュアル開発など、新たな表現領域にも取り組んでいる。
依田 純季
ピラミッドフィルム プロデューサー
中央大学文学部哲学専攻を卒業後、ピラミッドフィルムに入社。広告映像を中心にプロデュースを行う。近年は、実写映画やAI映像などのコンテンツ制作にも挑戦している。
受賞作を見て振り返る。制作当時の想いと熱量
ーー改めて、「BOVA」受賞、おめでとうございます!今、動画を見返してみて、いかがですか?
鳥居 薫(以下、鳥居):やっぱり、こだわりが詰まっているなと思いました。60秒でなるべく飽きさせないように作ったつもりでしたが、改めて見て、いろいろなシーンがあったなと思い出しました。応募が12月頭だったので、少し懐かしく感じますね。
永島 隆行(以下、永島):現場でも思ったのですが、ピラミッドフィルムの方々が、小道具や美術を、本当に一生懸命作ってくださったことが印象に残っています。「ここまでやってくれたんだ」という感動がありました。その時の思いが蘇りました。
那須川 剛(以下、那須川):今回、クライアントワークではなく、コンペということもあり、普段の仕事より予算も限られていたので、自分たちで美術もやる必要がありました。その分、制作部やキャストさんと一緒になって、手作りで映像を作り上げる楽しさがありました。
依田 純季(以下、依田):受賞の知らせを聞いたときは「よっしゃ!」って感じでしたね。もともと、CARTA ZEROの皆さんとは仕事でご一緒していて、この企画は、打ち上げの席で「一緒に、クリエイティブの賞に挑戦しませんか?」という話になったのがきっかけでした。みんなの「やりましょう!」という内側からのエネルギーで始まったのがすごくよかった。
永島:そうでしたね。CARTA ZEROはデジタルエージェンシーではありますが、もっとクリエイティブにも強く、フルファネルでマーケティングのサポートができることを打ち出していきたいと考えていました。そのためにも、広告賞の受賞を通して発信していくことが必要だよね、という会話をしていました。その第1号で受賞できたことには思い入れがあります。
「壊れたものを直す」から「遊びたくなる」へ。
「機能」から「感情」へ訴える戦略。
ーー今回の課題『10代、20代が「アロンアルフアを使ってみたい!」と思う動画』。これを聞いたときの感想は?
金澤佳子(以下、金澤):お題を聞いて、まずクリエイティブに落とす前段階として、「生活者にとっての商品イメージがどうなのか」「今回のお題・訴求に対して、クリエイティブで何をするべきなのか」を考えました。
公式で出しているSNSのコンテンツやホームページにある写真・動画を見ると、実用的で機能的な面が強く出ているように感じました。今、アロンアルフアという商品がどんな印象を持たれているのかと考えると、やっぱり「接着」だよね、というところを皆さんにアウトプットし、そこからクリエイティブに落としていただきました。

金澤 佳子 CARTA ZERO IMC局 ストラテジックプランニング部 ストラテジックプランナー / リサーチプランナー
鳥居:どの世代もですが、何か壊れた時にくっつけるツールのイメージ。若い子たちが前向きに「これで遊ぼう!」とは、現状なっていないだろうと。だからこそ、これを使って何を描いたら若者たちがやりたくなるのか。お題自体が、「楽しい、クリエイティブな使い方を感じさせたい、アロンアルフアをそういうツールにしたい」という要望だったので、「直す」じゃないものを作りたいと素直に思いましたね。
金澤:アロンアルフアは、見た目が可愛いというより、昔ながらの事務的な商品ですよね。どんなメッセージだったら生活者、特に若年層が好意的に受け取り、何より「使いたい!」と思ってくれるのかを考えた時に、「機能」より「感情」を前に出した方がいいと思いました。これまで機能で売ってきた商品だからこそ、どうエモーションを働かせるかが、今回のクリエイティブで重要なポイントだったのではないかと感じています。
アイデア出しから「推し活」への着地
ーー長年「接着剤」として認知されてきたブランドを、どう若年層に届けるのか。「推し活」というテーマは、どのように決まったんですか?
鳥居:まずは職種関係なく、ざっくばらんにアイデアを持ち寄ろうという形で始まりました。いろいろなアイデアが出ましたね。たとえば、学校の椅子を現実離れしたバランスで接着してインパクトを出そうとか、お化け屋敷を接着剤で作ろうとか。瞬間接着剤だから、映像映えするものがたくさん出たんです。
ただ、最初のお題に立ち返り、特別なことではなく「見た人がやりたくなるものって何だろう」と話し合い、那須川さんのアイデア「推し活」がテーマに決まりました。
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鳥居 薫 CARTA ZERO IMC局 クリエイティブプランニング部 クリエイティブディレクター / コピーライター
那須川:実は、推し活のアイデアを思いついたのは、企画出し前日の夜中だったんです(笑)僕自身も20代で、普段からInstagramなどで「今日ライブ参戦!」など、友達の推し活投稿を見ていたので、身近なところで結びついたのかもしれません。
金澤:今って、デジタルなものが増えている一方で、「アナログな作業」への魅力も高まっています。だから、アロンアルフアで推し活グッズを作るという体験自体、受けるのではないかと感じました。
鳥居:「直す」ではなく「好きなものを作る」方向に行ける。「推し活」って、熱量が可視化されるじゃないですか!それが今回のテーマにすごく合っていた。
「広告っぽさ」を消した、縦型動画ならではの演出
ーー今回の作品は、TikTokやInstagramなどSNSでの展開を意識した「縦型動画」部門でした。演出にあたって意識したことはありますか?
鳥居:ブランドが作った「広告っぽいメッセージ」は、縦型では響きにくいと言われています。だから「友達の投稿」のように見せることが大事でした。「アロンアルフアが言っている」のではなく、「使っている子たちが楽しんでいる」ように見せたかった。
那須川:縦型動画って、最初の数秒でスワイプされてしまうので、「冒頭の事件」「びっくり」を作ることはかなり意識しました。冒頭で「何か起きた」と思わせることで、続きを見てもらう。そのあとは、「なま感」「リアル感」をどう出すか。キャストさんが「演技している感じ」が出ないように、撮影前にみんなでご飯に行ってもらって、仲良くなったところを撮影することで、自然な空気感が出たと思います。実際、笑い声や掛け声も、後付けではなく、その場でアドリブ的に出たものをかなり使っています。
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那須川 剛 ピラミッドフィルム ディレクター / プランナー
鳥居:「彼女たちが楽しんで作った」という演出には、みんなでアイデアを出してこだわりましたよね。手ブレしたりとか、自撮り風カットにしたりとか、お互いに撮り合ったような画角とか。
那須川:編集でも、わざと手ブレ感を付け足しているんです。実際はスマホじゃなく、ちゃんとしたカメラで撮影しているのですごく綺麗なんですけど、友達が撮っている感じにしたかったので。
鳥居:わざとらしくなってはいけない。そのバランスは難しかったですね。「面白い」だけでなく、「エモーショナル」な印象を残したかった。後半にフィルムカメラ風の演出を入れたり、ナレーションに感情を乗せたり。「推しとひとつになれる瞬間って、こんなに尊いんだ。」「好きをくっつけようアロンアルフア」というコピーが最後にあるんですが、それも含めて、最後にエモーショナルな余韻を残すよう工夫しました。
AIアイドルと、深夜まで続いたグッズ制作。
「楽しむ熱量」が今回のミッションだった
鳥居:動画に登場するアイドルは、AIで生成した架空のものなんです。ポスターやCDジャケット、Tシャツなどのグッズも、すべてAIで出力して手作りしています。ピラミッドフィルムの制作のスタッフの中に、推し活をすごくやっている方がいて、「こういうグッズがあるとリアル」という感覚をどんどん出してくれました。アイドルがパッケージになっているお菓子までありましたね。
依田:3人グループのアイドルで、実はちゃんと名前もあるんです。Tシャツや小物は、撮影前日の深夜まで、那須川と制作スタッフで作っていました。それでも、衣装の内側にCDを隙間なく貼るなど、物理的に難しい部分もあったので、ディティールは編集でAIを使い密度と熱量を高めています。
ーーなぜ、そこまで小道具にこだわったんですか?
依田:この子たちが普段からこのアイドルのことを好きで、推し活をやっている。そのリアリティを限られた空間の中で表現するには、愛と熱量が注ぎ込まれている推し活グッズが、説得力を持たせてくれる。そのグッズ制作の傍にアロンアルフアがあることが重要でした。
そして今回の撮影自体も、熱量を持って楽しんだ方が、その熱量が動画にも反映されるのでスタッフもキャストも「楽しむこと」をミッションに楽しみました。
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依田 純季 ピラミッドフィルム プロデューサー
「接着中」ロゴに込めた、若者の「かわいい」の解像度
ーー印象的な「推しへの想い“接着中”」のロゴは、どのように生まれたんですか?
永島:僕はタイトルロゴをデザインしましたが、このロゴ、最初はもっと「もこもこ」したデザインだったんです。10代・20代の子たちに「可愛い」と思ってもらえるようなものを目指していて。ただ、縦型動画は表示される時間も短いため、視認性も大切。「瞬間的に読めること」と「かわいさ」の両立を考えて、今の形に修正していきました。

金澤:今回のクリエイティブって、アロンアルフアのイメージを刷新するものだったので、文字だけが急にゴシックだったり、広告っぽかったりすると、そこだけ急に世界観が戻ってしまう感じがあったんです。だから、「どうしたら可愛く見えるか」、永島さんとかなり話しましたね。
永島:「接着中」の文字の中に、どこにアクセントをつけるかをずっと試していて。いくつかトライアンドエラーして、「ここがハートになっても“接着中”の視認性はそんなに落ちないな」と、ハートを入れました。
でも、ハートひとつでも難しい。もこっとしたハートなのか、指で作るようなハートなのか。若い子たちと会話しながら作ることで、「じゃあこうした方がいいな」という着想につながった部分もあり、解像度が上がりました。みんなで作っているクラフト感があって、すごく嬉しかったですし、勉強になりました。
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永島 隆行 CARTA ZERO IMC局 クリエイティブプランニング部 クリエイティブディレクター / アートディレクター / OOHメディアプランナー
那須川:ハートやキラキラが、推し活のイメージとぴったりで、映像にもすごく合っていました!
共同制作によって生まれた相乗効果
ーー今回の共同制作を通して得た学びと、今後の展望について教えてください
金沢:今回すごく嬉しかったのは、協賛企業賞ということで、企業さんが選んでくださったことです。企業が抱える課題を的確につかんで表現できたことが、CARTA ZEROにとってもピラミッドフィルムにとっても良かったことだと思います。
永島:「商材の若返り」って、どうしても難しく考えがちなんですが、今回のようにポジティブに変換できると、見る人も楽しいし、作る人たちも楽しい。そういう表現って、すごく大事だなと改めて気づきました。「昔はテレビCMで知ってもらえたけど、今の若年層には知られていない」など、ブランドの若返りに関する広告の相談も多いので、向き合わなければいけない課題だと思いました。
依田:CARTA ZEROの皆さんに、大きな視点、広い視点で、マーケティングの観点を入れてもらったことが大きかったですね。お題を何度も読み返して、「もう一回ここだよね」と目的に引き戻してもらえた。アロンアルフアを「補修するもの」として見るのではなく、「クリエイティブを作るもの、作り変えるもの」だよね、と立ち返ることができた。自分たちだけでやっていたら、もっと狭いクリエイティブになっていたかもしれません。一緒に取り組んだことで、開かれたものになりました。
那須川:これまでの仕事でも一緒に企画出しをすることはありましたが、今回は、皆さんと普段より近い距離で集まって、企画を作ることができました。「こうやって戦略を立てて、企画を提案するのか!」と、勉強になりました。
鳥居:高品質な映像を作ってくれる、アイデアから一緒にやってくれるピラミッドフィルムと組めたことが大きかったです。特に、縦型のクリエイティブを一緒に組めたことは、今後につながる経験でした。商品説明だけではなく、エモーショナルをちゃんと描いて、共感を作っていく。ブランド側からのメッセージとして出すのではなく、生活者の気持ちに変換して、感情を動かす。そこにこだわって作れたので、他のクライアントや商材でも活かしていきたいです。
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